ご相談内容
業務で使っている外付けHDDから「カチカチ」という音がするようになり、パソコンにつないでも認識されなくなりました。中には工事関係の図面や見積、書類が入っていて、どうしても必要なデータです。取り出すことはできますか。
初期診断
同業他店様では対応ができず、仙台本社でお預かりしました。お預かりしたのは、東芝のポータブルHDD「Canvio DTB420」(2TB・USB接続・2.5インチ)です。内蔵されているドライブは MQ04UBD200。Canvio専用のドライブで、市販の単体HDDとは仕様が異なります。
このドライブの重要な特徴は、基板にUSBコネクタが直付けされていて、SATAコネクタを持たないことです。一般的な外付けHDDのように「ケースから中身を取り出してSATAでパソコンに直結する」ということができない構造になっています。

異音が出ている状態で通電を続けると、傷んだヘッドがディスク面を削ってしまう場合があります。診断は最小限の通電で進めました。ヘッドがディスク面に貼り付いて動かなくなるスティクションという現象もありますが、今回はそれには該当しませんでした。
実施作業
このドライブは基板にUSBコネクタが直付けされていて、SATAコネクタを持ちません。問題になるのは「物理的に接続できない」ことではなく、USB接続のままではATAコマンドが使えないことです。復旧作業ではドライブをATAコマンドで直接制御する必要があるため、インターフェイス(I/F)をSATA化しました。
次にROMの移植です。ROMには、そのドライブ固有の調整値が記録されています。ここが合っていないと、ドライブは正しく動作しません。ドナー側のROMを読み出してファイル化し、ピンを脱着したあと、Verifyで内容が一致することを確認。同じ手順を障害ドライブ側のROMでも実施し、こちらもVerify OKまで確認しました。ROMは読み出して終わりではなく、脱着したあとにきちんと同じ内容が書けているかをVerifyで確認するところまでが作業です。ここを省くと、後の工程で原因不明のトラブルになります。
クリーンブース内でヘッド交換を行い、あわせてROMとPCB(基板)も入れ替えました。ファームウェアは上書きしています。復旧機材の PC-3000 につないで通電したところ、異音は出ず、通常のタイミングでRDY(レディ)まで立ち上がりました。
続いてドライブ内部の管理情報(リソース)をバックアップしました。ここでは複数のエラーが出ましたが、最後まで処理を通しています。そのうえで DE(Data Extractor)を起動し、ヘッドマップを作成。ヘッドは0・1・2・3の4本で、全ヘッドのリードがOKでした。ファイルツリーを展開したところ、root直下の表示までリードエラーはなし。ツリーにエントリされた範囲を全選択してMapを作成し、Map作成完了の時点までリードエラーは出ませんでした。作成したMap範囲から読み出しを進めています。
復旧結果
対象セクタを100%読み出せました(ディスクから読み出せたセクタの割合であり、いわゆる復旧率ではありません)。工事・建設業務で使用されていた図面データ、積算データ、見積書、写真、各種書類を取り出し、お客様ご用意の保存用HDDへお渡しできる状態になりました。JWCAD・ArchiCADで作成された図面、みつも郎の積算データも、専用形式のまま復旧しています。お預かりから4〜6日でお渡しできる状態になりました。

同症状の方へ
「カチカチと異音がして認識しない」という症状は、ヘッドやモーターなど駆動部の物理障害が起きているサインです。この状態での通電は、データを失う原因になり得ます。異音が出ている状態で接続を繰り返したり、電源を入れ直したりすると、損傷したヘッドがディスク面(プラッタ)を削り、記録面そのものを傷つけてしまう場合があります。市販の復旧ソフトも、ドライブが認識されない以上は動作しません。異音に気づいた時点で、すぐに通電をやめてください。それが、データを守るために最も効果があります。
また、東芝 Canvio シリーズのように、外付けHDDの中にはSATAコネクタを持たないUSB直付けタイプがあります。「ケースから出してパソコンに直結すれば読めるのでは」と分解しても、そもそも接続できません。分解の過程で基板を傷めると、復旧の難度がさらに上がります。分解はせず、そのままお持ちください。
当社では、クリーンブースを備えた自社ラボで、ヘッド交換を伴う重度の物理障害まで対応しています。初期診断とお見積りは無料、復旧できなかった場合に費用はいただきません(完全成功報酬制)。仙台駅東口から徒歩5分、宮城野通駅から徒歩2分の本社へお持ち込みいただけるほか、全国からの郵送にも対応しています。図面・積算データなど業務データの復旧もお任せください。
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Recovery Engineer
復旧技術者の総括
異音がして認識しない原因は、ヘッドの物理障害でした。SATAコネクタを持たないUSB直付け基板をSATA化し、ROMを移植したうえでヘッドとPCB(基板)を交換。PC-3000で通電すると異音は出ず、通常のタイミングでRDYまで立ち上がりました。ヘッドマップでは0・1・2・3の全4ヘッドがリードOK、root直下までリードエラーなく展開でき、最終的に対象セクタを100%読み出しています。