ご相談内容
同業他店様では対応ができず、仙台本社でお預かりしました。対象はSeagateの2.5インチドライブ ST4000LM024(4TB)。お預かり時点では、ヘッドの劣化が疑われる状態との見立てが添えられていました。
通電するとモーターは正常に回転し、異音もありません。外から見て分かる異常がないタイプです。
ご依頼時の申告では、4TBの容量に対して7割程度がデータで埋まっている状態とのことでした。読み出し対象はおよそ2.8TB分になります。
初期診断

読み出しを始めると、1セクタを読むのに長い時間をかけなければ、読めるかどうかも分からない状態でした。ここで確認したのは「どのヘッドで起きているか」です。ヘッドの劣化であれば、特定のヘッドが担当する面だけに症状が出ます。ところが今回は、どのヘッドの担当領域でも同じ挙動でした。
さらに、まだ読み出しを試していない後方の領域では、全てのヘッドがスムーズかつ正常に読み進められました。ヘッドが全体的に劣化しているのであれば、後方も同じように読めないはずです。この2点から、原因はヘッドではなくプラッター(記録面)のコンディション悪化にあると判断しました。
したがって、ヘッド交換は行わない方針としました。ヘッド交換は分解を伴う侵襲的な処置です。原因がヘッドにない以上、行っても状況は改善せず、リスクだけが増えます。読み出しを粘り強く続けてクローンを取得する方向に切り替えました。
実施作業
不良セクタはドライブ全体に細かく点在していました。特徴的だったのは、読めないセクタが1つおき・2つおきに現れ、同じ場所を繰り返し読み込むと最終的には読めるという挙動です。手動で1セクタ読むごとに500ミリ秒ほど待つと、エラーにならずに読み進められることも分かりました。ただしこの動作を全領域に自動で適用することはできないため、読み込みを何度も繰り返して読める範囲を広げていく方針を採りました。
ファイルツリーに現れる範囲からシステム領域を除いたマップを作成し、不良セクタを含むファイルは飛ばしながら、繰り返し読み出しを実行しました。読めない領域を含むチェーンは、確認できたものから削除しながら進めています。作業中に機器側が不安定になる可能性を考え、マップを保存してから再開する手順を挟みました。
作業中は電源系のエラーやプロセスの停止が繰り返し発生し、そのつどハードリセットと再開を挟んでいます。エラーではなくレディ状態のまま進行が止まることもあり、その場合は一時停止では復帰せず、完全に停止してから再開させる必要がありました。
読み出せたセクタ数は、日を追って次のように増えていきました。
- 7月8日 7,811,633,533 セクタ
- 7月10日 7,811,718,518 セクタ
- 7月13日 7,811,843,151 セクタ
- 7月15日 7,811,928,986 セクタ
- 7月17日(最終) 7,812,007,289 セクタ
復旧結果
最終的に、全 7,814,037,168 セクタのうち 7,812,007,289 セクタ、およそ99.97%を読み出しました。最後まで読み出せなかったセクタは 515,411 セクタ、全体の約0.007%です(ディスクから読み出せたセクタの割合であり、いわゆる復旧率ではありません)。
取得したクローンから無作為に20ファイルを抽出して有効性を検証したところ、20点すべてが正常に開ける状態でした。ただし、データが書き込まれている領域にも不良セクタが残っているため、一部のファイルには破損や欠損が生じている可能性があります。お預かりからお渡しまで、約5週間をいただきました。
同症状の方へ
異音がしない、モーターも正常に回っている。それでも読み出せないことがあります。今回のように、ヘッドではなく記録面そのものが劣化しているケースです。音がしないから軽症、とは限りません。
外から見て分かる異常がない分、こうした状態は通電を続けられてしまいがちです。読めない領域に何度もアクセスさせると、状態がさらに悪化する場合があります。おかしいと感じた時点で使用をやめてご相談ください。
また、原因の切り分けを誤ると、本来必要のないヘッド交換を行ってしまうことがあります。当社ではヘッド依存かどうかを確認したうえで、必要のない処置は行いません。初期診断とお見積りは無料、復旧できなかった場合に費用はいただきません(完全成功報酬制)。仙台駅東口から徒歩5分、宮城野通駅から徒歩2分の本社へお持ち込みいただけるほか、全国からの郵送にも対応しています。

Recovery Engineer
復旧技術者の総括
当初はヘッドの劣化が疑われていましたが、全てのヘッドで同じ挙動が出ること、未試行の領域では全ヘッドが正常に読めることから、原因はヘッドではなくプラッターのコンディション悪化と判断しました。ヘッド交換という侵襲的な処置は行わず、繰り返しの読み出しで読める範囲を広げる方針に切り替え、約5週間かけて全体の約99.97%のセクタを読み出しています。